翻訳って言っても色々! ―文芸翻訳編

Anyaは翻訳者ですが、翻訳やりたいっていう方は結構多いですね。でも、「翻訳」っていったときに、皆さん想像していることってかなり漠然としていませんか?

今回から翻訳業界内の翻訳の分類について、ご紹介していきます!今回は、文芸翻訳についてです。

文芸翻訳

大体、翻訳というと、絵本や小説の方を想像されるかなと思います。これは文芸翻訳(または出版翻訳)というジャンルですね。出版だとかなり広いけど、文芸っていうとビジネス書等の実用書はあまり含んでいないニュアンスだと思います。

文芸翻訳者、どんな人がいる?

まずはイメージをつけるために、文芸翻訳で有名な方だと皆様ご存知村上春樹氏、東大文学部名誉教授でアメリカ文学専門の柴田元幸先生あたりでしょうか。

  

翻訳関連の著書も多く出されている方なら安西徹雄さん、中村保男さん。Anyaが漠然と翻訳者やろうかと思ったときに、この辺りを読みました。

 

少し前に翻訳本が流行った方だと、脱税でも話題になりましたがハリー・ポッターを訳した松岡佑子さん、他にもダ・ヴィンチ・コードの越前敏弥さんあたり。

 

あ、ちなみによく「翻訳」なんていいますけど、「翻訳者」と比べて一気にご大層な感じになるので業界内では普通は文芸翻訳をやっていて村上春樹氏や柴田先生レベルの人のことを指すかなあと思います。

興味があるんだったら、実際に文芸翻訳をやってきた方の翻訳関連の本等は一通り読んでみられると良いと思います。Anyaも学生時代に一通りは読んでいます。この辺も定番ですかね。

文芸翻訳の収入って?

日本国内で文芸翻訳だけで食べていけるのは数人と言われています。その理由は印税ベースの報酬体系になっているためです。

上にも挙げた越前敏弥さんは、ダ・ヴィンチ・コードが売れる前は全然収入が足りず塾の講師等で食いつないでいたとか。当たるも八卦当たらぬも八卦、舞台俳優のように本当に好きじゃないと続かないんじゃないかもしれませんね。

参考に、少し古いかもしれませんが、柴田耕太郎さんのサイトにこんな記載があります。

翻訳者の側から見ると、現行の印税率では生活を成り立たせてゆくのはかなり厳しい。大手出版社の文庫の初刷は三万部から。定価六〇〇円の八%印税として一四四万円の収入。年に四冊こなしようやく六〇〇万円弱。何本かに一本増刷りがでて、年収一〇〇〇万円を超えることもある――これは一番恵まれた翻訳者の姿である。中小出版社であれば初刷はこれほど出ないし、そもそもコンスタントに年四本受注することもこなすことも大変なのである。「印税で食う」ことは並大抵のことではない。このため従来、翻訳といえば語学力に覚えのある大学教員が趣味と実益を兼ね引き受けるのが常だった。近年では、収入自体にあまり頓着しない高学歴主婦が市場に参入してきている。男性の専業出版翻訳者は少なくなっているのが現状だ。

引用:http://www.wayaku.jp/book/seiko.htmlより

他にも、下のような記事が…。読むだけで厳しいのがよく分かります。。

文庫初版部数の落ち込みと翻訳者のギャラの低下が話題に / 3カ月かけて30万円以下

最近は出版不況で、文芸書は初版数千冊なんてこともあるそうです。確かに翻訳小説って売れてるイメージありませんよね。最近翻訳小説でブームになったのって、映画化されるくらい話題になったものいくつかだけじゃないでしょうか?

今海外で爆発的に人気なドラマにGame of Thronesがありますが、欧米では本もすんごい人気なのに日本ではドラマも本も残念なことにあまり盛り上がってない印象…。Huluだと全話独占で見られるので是非一度見てみてくださいね。普通の物語のお決まりの流れとか裏切りまくりなのに面白いです。

さて、話を戻して、文芸は何が難しいって、自分が小説家レベルの文章が書けないとお話にならないことですね。翻訳小説はよく「いかにも翻訳調で読みづらい!」と叩いているレビューがありますが、そんなレビューをたくさんもらうようじゃだめなんですよ。

プロットとか考える手間は省けるとしても、作家のような文章のセンスって、鍛えてどうにかなると思えない部分があるようにも思います。時々、読ませる文章をナチュラルに書ける人っていますけど、ああいうのってセンスとしか言えない部分ってあるので、割と選ばれし者のための仕事なのでは?とAnyaは思っています。

こう考えると文芸って必要な能力の割に稼ぐのが至難の業すぎるので、余裕が出来てから趣味的にやっていかないと生活自体がかなり厳しいことは覚悟しておかないとだめだと思います。

文芸翻訳をするには…?

稼ぐの厳しいの分かったけど、そもそもどうやったら文芸翻訳やれるんですかって話に移ります。

後の記事で詳述する実務翻訳系と比べて、こちらの方が自分から仕事を取っていくガッツやコネは結構大事だと思います。出版翻訳を実際になさっている方によると、出版翻訳の需要が生まれるまでが以下のような流れになります。

出版翻訳を実現するためには、
1、出版社がある翻訳書を出すことを決める
2、その訳者として、自分を選んでくれる
というふたつのステップが必要ですよね。

出版社の編集者が「日本で訳書を出したい!」と思う原書を見つけるには、3つのパターンがあるそうです。1つは、年に何度か開催される海外の「ブックフェア」に出版社が出かけていって、翻訳出版したい本を見つける、というものです。

いちばん大きいブックフェアは10月にドイツのフランクフルトで開催されるもので、翻訳書を出している出版社はたいてい参加しています。ほかには、ロンドンで開催されるものや、児童書ならイタリアのボローニャで開かれるものが有名です。

2つめのパターンが実際にはいちばん多いのですが、翻訳エージェント(翻訳権を扱う代理店)からの提案によって原書と出会うパターンです。翻訳書の奥付のページを見ると、タトルモリ、日本ユニエージェンシーといった名前が載っていますが、これらがエージェントです。エージェントは、各国のエージェントと情報交換しているので、企画段階のものも含め、多くの情報が集まっています。エージェントはその情報をもとに、出版社に「お宅で出しませんか?」と打診するのですね。

そして、最後のパターンが「翻訳したい人からの持ち込み企画」。このパターンはそれほど多くはありませんが、私がこれまでに翻訳出版した中でもこの持ち込みパターンだったものも数冊ありますから、ゼロではありません。

引用:http://www.hicareer.jp/trans/nextstage/9.htmlより

出版系だと生計を立てるのに現実味があるのはビジネス書や啓発本系になってくるかなと思います。文学ほど個性も求められませんしね。それにいくらでも数出てますし、アメリカから入ってきたものも人気ですよね。
最近は、やたらハーバード流なんちゃらとかマッキンゼー流とかよく出てるのをご覧になった方もいらっしゃるのでは?いつまでもB級映画みたいなタイトルを付ける理由は解せませんが

ビジネス本だと「チーズはどこに消えた?」を翻訳された門田美鈴さんの訳されたものを見ていると、同じ著者のものを多くリピートなさっているようです。この方なんかはとても良い成功例だと思います。



厳しい世界…だけどまだ興味ある?

文芸翻訳は広い翻訳業界の一ジャンルにしか過ぎません。予想以上に厳しいと思われたでしょうか。夢はある世界ですが、芸能界と同じで煌びやかな世界ほど憧れる人も多く競争率は高い上、生計を立てたいなら積極的には勧められない選択肢だということは一応覚えておいた方が良いと思います。

とりあえず、興味があるな~という段階なら、Anyaも入っていたことがありますが翻訳者ネットワークの「アメリア」というサイトがあります。過去の大量のアーカイブも含め、プロの翻訳者の方によるコラムもありますし、他の資格試験よりよほど安くいろんな分野の翻訳課題の添削を受けることもできます

このサイトには出版持ち込みステーションというコーナーもあるので、出版翻訳にこだわりたい、それに訳したい本があるなら、ここを足がかりにしてチャレンジしてみることもできます。

あくまで翻訳業界初心者向けのサイトではありますが、このサイトにしかない求人も結構ありますし、初心者向けだけあって割と応募はしやすいです。分野にもよるかもしれませんが、報酬が一概に安いわけでもないので独立してしばらくしてから求人情報のために再入会したこともあります。

一度仕事をいただければ年会費って1回の仕事で元を取れるので、とりあえず1年だけでも入ってみると本何冊分もの情報は転がっていますから、広告が半分以上の某翻訳雑誌買うよりもおすすめです。翻訳者の方がよくSNSで雑誌の宣伝とかしてますがいつも同じメンツでつるんで企画してる感じであまり目新しい情報もありません…

最後に注意喚起しておきたいのですが、翻訳スクールの中には、講座を受けさせ、その後さらに何十万円もお金を出させて文学作品や絵本を翻訳する機会を与えますというところもあるにはあります。これは「翻訳者」というより完全に「お客さん」ですから、その後継続的な仕事につながるのかはきちんと考えてください。その会社自体はほとんどスクールビジネスだけで儲けているのではないかな…と思います。